ドローンが実際に使われている『ゲンバ(現場)』を訪ねるこのシリーズ。第1回目は、帯広畜産大学で牧草の採草地での雑草判別や、防風林のデータベース化の研究を行なっている地域環境工学の辻修教授の研究室を訪ねた。
帯広畜産大学 辻 修 教授と研究室のみなさん
研究のために必要な「空からの目」として
自動撮影でドローンを活用
昨年、「小型UAVを用いた採草地の管理に関する研究」でドローンが活用された。採草地の雑草判別に適した時期と、空撮高度を推定する研究だ。
採草地と呼ばれる乳牛の飼料となる牧草を刈り取る場所では、チモシーやシロクローバーなどの品種が育つ。しかし、採草地にはそれ以外の雑草や栄養価の低いリードカナリーグラスなどの牧草も混じっており、時期によって一緒に刈り取ると、栄養価の低い飼料になってしまう。ドローンの空撮画像を解析することにより、それらの生えている範囲を判別するのだ。
調査はPhantom3で6月から10月にかけて毎週行われた。アプリで自動操縦し、50m、75mの高さから2秒毎に自動撮影を行った。こうして撮影した多くの空撮写真が画像解析にかけられた。
結果として、一番最初の刈り取り時期から6~7週間後の画像で判別ができ、高度75mの撮影が望ましいことがわかった(写真)。
また、畑を守る防風林のデータベース構築の研究では、従来の測定法に比べ、ドローンで安価に短時間で測定できる方法の検証を行った。木は風で揺れるため3D画像にするのは難しいという。Phantom2でインターバル撮影を行い、GISという地理情報システムに重ね合わせる。現在は大学近郊でデータをとっているが、この手法が確立できれば、帯広全域、いずれは1年に1町村の調査を考えているという。
十勝の酪農家や農家のために、どちらの研究も継続されていく。辻教授がドローンに期待することは、「技術が進歩して近赤外線を使ったカメラ搭載や、アプリがもっと使いやすくなること。そうすれば十勝にもっと良い結果をフィードバックできますよ」と語る。
ドローンの自動操縦アプリは「Litchi」、画像解析には「imageJ」を使用。また3Dデータ作成には「Agisoft PhotoScan Professional」を使用し、200枚の空撮画像を読み込んで3D化するのに約5〜6時間を要する。
帯広畜産大学
辻 修 教授
香川県生まれ。帯広畜産大学大学院卒業後、帯広市役所農政部を経て同大学助手。北海道大学で農学博士号取得。助教授を経て2009年より同大学教授教授に就任。
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